「1on1をやるように言われたけれど、何を話せばいいかわからない」
管理職の方から、こういった声をよく聞きます。1on1面談は近年多くの会社で導入されていますが、実際に現場でうまく機能しているケースはまだ多くありません。「形だけの雑談になってしまう」「部下が何も話してくれない」「毎回同じような話になる」という悩みは、管理職共通の課題です。
今回は、1on1を「意味のある時間」にするための実践的な進め方を、具体的にお伝えします。
そもそも1on1は何のためにやるのか
まず、根本的な目的を確認します。
1on1は「進捗報告の場」でも「評価の場」でもありません。部下が「話してよかった」と感じ、自分の仕事や成長について考えが深まる場です。
管理職が「何か有益なことを教えなければ」「部下の課題を解決してあげなければ」と思うほど、1on1は管理職のパフォーマンスの場になってしまいます。そうではなく、主役は部下です。部下が話し、考え、「次はこうしよう」と思えた——それが成功した1on1です。
この目的を理解するだけで、「何を話すか」の悩みがかなり軽くなります。「何かを提供しなければ」ではなく、「部下が話しやすい場を作ればいい」という発想に変わるからです。
1on1の基本的な流れ(30分モデル)
時間は30分が基本です。それ以上長くなると、双方の集中が途切れます。以下の流れを参考にしてください。
最初の5分:場を温める 近況・体調・最近気になっていること——仕事に限らず、部下の「今の状態」を確認します。「最近どう?」というひとことから始めるだけで構いません。この時間は「安心して話せる場」を作るためにあります。
中盤の20分:テーマを深める 部下が今もっとも頭を占めていること・困っていること・考えていることを引き出します。管理職は「聞く」「問いかける」が基本です。アドバイスをしたくなる気持ちをいったん脇に置き、「どうしてそう思うの?」「もう少し聞かせて」と深掘りすることに徹します。
最後の5分:次のアクションを確認する 「次回までに、自分でやってみることはある?」「管理職として何かできることはあるか?」を確認して終わります。具体的なアクションが決まらなくても構いません。「話した」という事実が次の行動の種になります。
部下の話を引き出す「問いかけ」の例
1on1で使える、実際に効果的な問いかけを紹介します。
状態を確認する問い
- 「最近、調子はどう?正直なところ教えて」
- 「仕事とプライベート、今どっちが忙しい感じがする?」
仕事の課題を引き出す問い
- 「今、いちばん頭を使っている仕事はどれ?」
- 「最近、うまくいかないなと感じていることはある?」
- 「逆に、最近うまくいったと感じた場面は?」
成長・キャリアに触れる問い
- 「半年後、自分がどうなっていたいかイメージある?」
- 「今の仕事を通じて、どんなことを学んでいると感じる?」
関係性を深める問い
- 「私(管理職)への要望や、もっとこうしてほしいということはある?」
- 「チームの中で、改善できることがあるとしたら何だと思う?」
これらをすべて1回の1on1で使う必要はありません。部下の状態・テーマに合わせて、2〜3個選んで使えば十分です。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:報告会になってしまう 管理職が「最近の進捗はどう?」と聞いてしまうと、部下は業務報告を始めます。1on1は進捗確認の場ではないことを、部下にも事前に伝えておくことが大切です。「業務の進捗は別の場で確認する。1on1はあなた自身のことを話す場」と明示するだけで変わります。
失敗2:管理職が話しすぎる アドバイスしたい、経験を伝えたい——という気持ちはわかりますが、管理職が話す割合が増えるほど、1on1の効果は下がります。「7割は部下が話す時間」を意識してください。管理職の役割は「答えを出すこと」ではなく「部下が考えるための問いを出すこと」です。
失敗3:毎回同じテーマになる 1on1を繰り返していると、話題がマンネリ化することがあります。そんなときは「今日は5年後の話をしてみよう」「今日はチームのことより、個人として最近どうかを聞かせて」など、意図的にテーマを変えてみてください。
1on1を「続ける」ことが最も大切
最後に、最も重要なことをお伝えします。
1on1は、1回1回の完成度より、「続けること」のほうがずっと大切です。
最初はぎこちなくて当然です。何を話せばいいかわからなくて当然。部下も最初は戸惑います。でも、月に1回・毎回30分・少なくとも半年続ける——これだけで、部下との信頼関係は確実に変わります。
「先月話したこと、その後どうなった?」という問いかけができるのも、継続してきたからこそです。継続の積み重ねが、部下にとって「この人は本当に自分のことを気にかけてくれている」という実感を生みます。
うまくできなくていい。ぎこちなくていい。まず、続けることを目標にしてください。
まとめ
- 1on1の目的は「部下が話してよかったと感じる場を作ること」
- 30分の基本的な流れ:場を温める(5分)→テーマを深める(20分)→次のアクション確認(5分)
- 管理職は「聞く・問いかける」が基本。話しすぎない
- よくある失敗:報告会化・管理職が話しすぎ・テーマのマンネリ化
- 最も大切なのは「続けること」。1回の完成度より継続を優先する