「うちの管理職は、言ってもなかなか動かなくて……」
経営者の方から、こういった相談をよく受けます。会議でいくら話しても変わらない。個別に伝えても、翌月には元に戻っている。「やる気がないのか」「能力がないのか」と、管理職個人の問題として見てしまいがちですが、少し立ち止まって考えてみてください。
本当に問題は「管理職個人」にあるのでしょうか?
地方の中小企業で多くの組織支援を行ってきた経験から言えば、「管理職が動かない」と感じる状況の多くは、管理職個人の問題ではなく、組織の構造的な問題から生まれています。
今回は、その「構造的な原因」を3つに整理してお伝えします。
原因1:管理職の「役割」が明確に定義されていない
最も多い原因がこれです。
「管理職なんだから、チームをまとめてくれ」「部下を育ててほしい」——経営者はそう思っていますが、管理職本人は「具体的に何をすればいいのか」がわかっていないケースが非常に多いのです。
たとえば、あなたの会社の管理職は「自分の仕事の何割をマネジメントに使うべきか」を知っていますか?「部下を育てる」とは、日常業務の中で具体的にどういう行動を指しますか?「チームをまとめる」とは、週に何回、どんな場を設けることを意味しますか?
これらが言語化されていない状態で「動いてほしい」と思っても、管理職は動きようがありません。動かないのではなく、「何に向かって動けばよいかがわからない」のです。
対策として最初にすべきこと: 管理職の「役割定義書」を作ることです。「管理職の仕事とは何か」「日常業務の何割をマネジメントに使うべきか」「毎月やるべきことのリスト」——これを経営者と管理職が一緒に言語化するだけで、動き方が変わります。
原因2:管理職が「孤立」している
管理職は、組織の中で孤独な立場です。
経営者には「現場のことをわかってくれない」と感じ、部下には「管理職の立場で言えないこともある」と思い、同じ管理職同士は競合関係だったりする。誰にも本音を話せないまま、一人で抱え込んでいる管理職は珍しくありません。
この孤立が「動かない」という状態を生み出します。「相談できる場がないから、とりあえず動かないでおこう」「失敗してまた怒られるより、現状維持のほうが安全」という心理が働くのです。
経営者から見ると「やる気がない」「主体性がない」と映りますが、管理職からすれば「動き方がわからないし、相談できる場もない」という状態です。
対策: 管理職が「安心して本音を話せる場」を意図的に作ることが重要です。月1回の管理職ミーティング、経営者と管理職の1on1、同じ管理職同士が悩みを共有するピアミーティング——いずれも「正解を出す場」ではなく「話せる場」として設計することがポイントです。
原因3:管理職に「経験から学ぶ機会」が設けられていない
管理職は、マネジメントの仕事を「やりながら覚える」しかない立場です。プレイヤーとして優秀だったとしても、マネジメントは別のスキルセットが必要で、ほとんどの管理職はその訓練を受けないまま管理職になります。
問題は、「やりながら覚える」には、「振り返る機会」が不可欠だという点です。うまくいったこと・うまくいかなかったことを定期的に振り返り、「次はこうしよう」と意識的に改善する機会がなければ、いつまでも同じ失敗を繰り返します。
多くの会社では、この「振り返る機会」が設けられていません。忙しいから、面倒だから、どうやって振り返ればいいかわからないから。その結果、管理職は「なんとなく今までどおり」の行動を繰り返し、経営者には「変わらない」と映ります。
対策: 月1回30分でいいので、「管理職としての自分を振り返る時間」を設けることをお勧めします。「今月、部下のために何ができたか」「うまくいかなかった場面は何か、なぜか」「来月、一つ変えるとしたら何か」——この問いを定期的に自分に問いかけるだけで、成長のサイクルが生まれます。
「動かない管理職」を責める前に、問うべきこと
管理職が動かないとき、多くの経営者はまず「管理職個人の問題」として見てしまいます。でも、ここで立ち止まって3つの問いを自分に向けてみてください。
- 「その管理職の役割を、明確に言語化して伝えたことがあるか?」
- 「その管理職が安心して本音を話せる場を、意図的に作っているか?」
- 「その管理職が経験から学び、成長できる仕組みを用意しているか?」
3つのうち1つでも「ない」と答えたなら、問題の一端は組織の設計側にあります。
管理職個人の能力や意欲の前に、「管理職が機能できる環境になっているか」を見直すことが、経営者の仕事のひとつです。
まとめ
- 「管理職が動かない」は、管理職個人の問題である前に、組織の構造的な問題であることが多い
- 原因1:役割が定義されていないから「何をすればいいかわからない」
- 原因2:孤立しているから「動くより現状維持が安全」になっている
- 原因3:振り返る機会がないから「同じ行動を繰り返す」
- まず経営者が「管理職が機能できる環境を整える」ことが先決
管理職育成・組織設計についてご相談がある方は、ぜひ豊明コンサルティングにお声がけください。
「うちの管理職をどう動かすか」を、一緒に考えます。