「定年まで5年の社員が、うちの技術の8割を持っている」
──建設業・製造業・物流業の経営者から、よく聞く言葉です。
ベテランが退職したとき、そのノウハウをどう残すかは、今の中小企業にとって最も重要な経営リスクの一つです。
しかしほとんどの会社では「早めに動かないといけないとは思っているが、何から手をつければいいかわからない」という状態が続いています。
なぜ技術承継が進まないのか
技術承継が進まない理由は主に3つです。
① 時間がない:ベテランは現場で一番忙しい人です。
「引き継ぎ資料を作って」と言っても、日常業務の合間にそんな時間はありません。
「大事なのはわかっている、でも今日もやることが山積みだ」という状態が続きます。
② 言語化が難しい:長年の経験で身についたノウハウは、「なんとなくわかる」「体で覚えている」という暗黙知であることが多く、言葉にすることが難しいのです。
「こうすればうまくいく」は頭の中にあっても、それを文章にするのは別の能力が必要です。
③ 誰に引き継ぐかが決まっていない:後継者が明確でないと、資料を作っても誰も使わないという結果になります。
「なんとなく若い人に伝えれば」という状態では、承継は進みません。
まず「話してもらう」ことから始める
技術承継の出発点は、資料作成ではありません。「ベテランに話してもらう」ことです。
インタビュー形式で「この仕事のコツは何ですか?」「若手がよくやるミスはどんなことですか?」「あなたが気をつけていることは?」を聞いていく。
録音してもいいし、メモしながら聞いてもいい。
話した内容をベースに、後から文章にまとめていく──この順序が、言語化の負担を下げます。
「書いて」ではなく「話して」が、ベテランの暗黙知を引き出す第一歩です。
AIを活用した承継の効率化
最近では、録音した会話や手書きのメモをAIで文字起こし・整理することで、手順書や判断基準の下書きを短時間で作れるようになりました。
スマートフォンで録音した30分のインタビューを文字起こしし、AIで「手順書の形式にまとめて」と指示するだけで、粗削りながらも文書の骨格が出来上がります。
これを本人に確認・加筆してもらうことで、完成度の高いノウハウ文書が作れます。
「完璧な資料を作ること」にこだわらず、「今の状態を70点で残す」ことを目標にすると、動き出しやすくなります。
承継の優先順位をつける
全てのノウハウを同時に承継しようとすると、始まる前に力尽きます。
まずは「この人が明日いなくなったら会社が止まる仕事」を1つだけ選ぶことです。
1人のベテランの「一番重要な仕事」を1本だけ文章化してみる。
それだけで、技術承継は始まります。「1本できた」という実績が、次の承継への動力になります。
技術承継・暗黙知の形式知化については、建設業・製造業・運送業など地方の中小企業向けの実践的なサポートを提供しています。
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